先日、愛車が突然故障して、痛い修理代約3万円を支払ってきた、スミ利文具店 藤井です。
エンジンのターボチャージャを冷却する為の電動ポンプの故障でした。 エンジンの中でも高温になる付近に設置されていることも有り、この車種では5年くらいで故障する場合が多く、早いと3年くらいで駄目になることもあるとか・・・。
さて、気温もグングン上がり始めた今日この頃。 スミ利では万年筆をお使いの皆様にご注意いただきたいことがございます!
実は、スミ利では、初夏の頃から梅雨明けの頃までは、万年筆のインク漏れのご相談が増える傾向が有ります。
特に、梅雨が明けて急激に気温が上昇してくる頃や、台風が接近する頃は、要注意です。 気温、気圧の変化が極端になる時期は、自分の体調だけでなく、万年筆の状態にも気を配りましょう! 酷い場合は、キャップを開けて書こうとした途端、ペン先付近からプクプクと気泡と共にインクが噴出してきた!なんていうこともうかがいます。
この現象は、急激な気圧変化で、万年筆のインキタンクやカートリッジの中にある空気が膨張し、ペン先から余分なインキを押し出してしまうことが主な原因です。 通常、有名ブランドの万年筆の多くは、インキ漏れの可能性を予め考慮し、気圧変化で必要以上にインクが押し出されても、余分なインキをある程度蓄えておける(漏らさない)様なペン芯の設計を行っています。 ペン芯の蛇腹部分がそうした役割を担っています。一種の安全装置みたいなものですね。
ただ、ペン芯設計上の想定を超える気圧変化が起こった場合や、既にペン芯に余分なインキが存在する様な場合は、上記の安全装置が役に立たない可能性が出てくるのです。
では、どんな点に注意して対策すれば良いでしょうか?
先ず一番簡単で大事なのが、ペンの姿勢。 携帯時や保管時は必ずペン先が上向きになる様にしましょう! こうすることで、ペン芯の余分なインキは重力によってインキタンクに戻りやすくなり、インキ漏れを防止できます。 時々、ペン先を上に向けて、首軸付近を軽く爪ではじいてやるのも効果的です(余分なインクをインクタンクに戻す為)。 インク漏れでご相談をいただいた場合、メーカーさんから最初にアドバイスされるのがこうした対処です。 これに加え、時々ティッシュペーパー等でペン先をぬぐっておくのも効果的ですね。
次に、カートリッジ(インクタンク)内のインク残量に注意することです。 これはインク残量と言うよりも、空気の量と言っても良いかと思います。 万年筆の説明書を読むと、航空機内に万年筆を持ち込む場合、新しいカートリッジに交換しておくか、インクタンクを満タンにしておく様に書かれている場合があるかと思います。 インク漏れは、カートリッジ(インクタンク)の中に、インクも空気もたっぷりある状態が一番危険だと言います。 つまりカートリッジのインクを半程度使った様な状態が最も危ない訳です。 カートリッジ内の空気が多ければ、気圧変化による影響をより大きく受けてしますし、残っているインクもたっぷりなので、漏れる条件を満たしているのです。 実際上、常に万年筆のインクを満タンに近い状態で保ち続けるのは、実用上問題が有りますし(不便極まりない)、不可能ですが、気温がグングン上昇する時期は、インク残量に気を配り、残り少なくなっていたら、早めに新しいカートリッジに交換したり、補給する様にすると、インク漏れの可能性を軽減できます。
また、これは念には念を・・・という程度の対策ですが、カートリッジ、コンバーター両用式の万年筆の場合、よりインク容量の少ない方に交換することで、インク漏れを軽減できる可能性がございます。 例えば、各社のコンバーターはカートリッジの半分程度の容量なので、カートリッジではなく、コンバーターを使ってみるのも一つの手です。 またパイロット社の様にCON-70、CON-50等、複数の適応コンバーターが有る万年筆の場合、容量の大きいCON-70ではなく、容量の小さいタイプに変更することで、インク漏れを軽減できる可能性があります。
これは、先ほど述べた、ペン芯の設計にもかかわってくるのですが、万年筆メーカーは自社のカートリッジやコンバーターの容量を前提にペン先、ペン芯の設計をしています(あるいはその逆もあると思います)。 例えば、インク量が多い方が便利だからと言って、インク容量2倍のカートリッジを開発したとしても、ペン芯の性能がそれに見合っていないと、すぐにインク漏れを起こしてしまって大変な訳です。 余分なインクを一定量蓄えておけるペン芯を持っていないとダメな訳ですが、カートリッジの容量が大きくなるとその分、気圧変化の影響も大きいのです。
まあ、パイロットさんはじめ、有名メーカーの製品は、基本的にその辺りの事情を十分考慮して製品開発されているので、適合する純正カートリッジやコンバーターを使っている限り、妙なインク漏れを生じる危険は少ないのですが、ペン芯サイズの都合や、設計時期など、ペンの種類によって、ペン芯が余分なインクを蓄えておける量(性能)に違いが有るのは事実ですので、理屈の上では上記の対策もまんざら無意味ではない訳です(笑)。
それから、上記のことはどれもこれも、メーカー純正インクを使う前提であることも書き加えておきますね(ペン芯が余分なインクを保持できる為には、表面張力やらインクの粘性やらpHやら・・・色々と科学的に難しいことが関わってるそうです・笑)。
今年の夏は、かなり暑くなるそうなので、人間も万年筆も十分気を付けて乗り切りましょう!